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イナバノシロウサギ 5月10日(水) |
神話「因幡の白兎」をご存じでしょうか。
この神話を医療従事者は知っておくべきだとよく言われています。
まずは物語をおさらい。
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隠岐の島に住む一匹の白兎が対岸の因幡に行きたいと考えていました。
しかし自力では海を渡れないのでワニザメを騙して渡ろうと考え、
「ワニザメさん、君たちと私とでどちらが仲間が多いか
比べてみよう」と提案し、ワニザメを対岸まで並べさせ、
その背中を跳びながら渡っていきました。
そしてもう少しでたどり着くというところで
嬉しさのあまり「君たちは騙されたのさ」と高笑いしました。
怒ったワニザメは白兎を捕まえ、その皮を全てはがしてしまいます。
白兎が痛くて泣いているところに通りがかったのは、
因幡の国に八上比売(ヤガミヒメ)という美しい姫がいることを聞きつけて、
求婚のために出雲から来た八十神たち(ヤソガミ;大国主命の兄弟神たち)でした。
面白半分に「海水で洗って、風に吹かれていれば治る」と
嘘の治療法を教えました。
白兎が言われた通りにしてみると、
海水が乾くにつれてひび割れて、
ますます痛みが悪化してしまいました。
そこに八十神たちの全ての荷物を持たされた
大国主命(オオクニヌシノミコト)が遅れて通りがかり、
「河口の水でよく洗ってから、蒲(がま)の穂の上で寝なさい」と
白兎に言いました。
その通りにすると、やがて毛は元通りになり白兎は深く感謝しました。
実はこれが「日本で最初の医療行為」と言われているエピソードなのです。
河口の水は海水と川水が混ざったいわゆる汽水で、塩分濃度は生理食塩水に近く、
さらに蒲の穂は蒲黄(ほおう)という名前で現在も生薬として使用され、
傷口ややけどに直接散布して収斂性止血薬として用いられています。
物語の最後は、感謝した白兎は大国主命に言いました。
「八上比売と結婚できるのは意地悪な兄達ではなく心優しいあなたでしょう」
その言葉通り、八上比売と結婚できたのは大国主命でした。
一般的にこの神話の教訓は「因果応報」
良い行いをすれば良い結果が、悪い行いをすれば悪い結果がでるということ。
では医療従事者が学ぶことは。
「間違った治療を行ってはいけない。
正しい治療を行なうことが大切である」ということ。
そして、ワニザメを欺いた自業自得の白兎であっても、
それを咎めず「誰に対しても公平な医療を行う」という医療の根本です。
機会があれば再読してみては?
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